「今の若い子はすぐ心が折れる」「せっかく100万円かけて採用したのに3ヶ月ももたない」——早期離職に頭を抱える中小企業の経営者や人事責任者は少なくありません。
しかし、現場の教育担当を責める前に見直すべきものがあります。それは採用段階での「期待値調整」です。実は3ヶ月未満で退職する若手の56.4%が、入社1週間未満で会社にギャップを感じていることが調査で明らかになっています。
本記事では、新卒の早期離職の原因を採用マーケティングの3つのギャップから読み解き、中小企業が今すぐ変えるべき面接設計を具体的に解説します。
目次
監修者

株式会社Revive代表
熊野拓人
21歳で起業後、営業支援・採用支援事業を展開。
伴走型採用支援サービス「あたりまえリクルーティング」を立ち上げ、これまで250社以上の採用支援に携わる。
2024年にはカーブアウトM&A(事業売却)を実施。現在は従業員1,000名規模の派遣会社にて経営企画部長・総務部長を兼任し、採用・組織づくり・人事制度設計を推進している。
採用支援会社としての現場経験と、事業会社の責任者としての実務経験の両面から、多くの成功と失敗を見てきた稀有なキャリアを持つ。
企業と個人がお互いを理解し、より良い出会いを実現する採用の在り方を追求している。

株式会社Revive代表
熊野拓人
21歳で起業後、営業支援・採用支援事業を展開。
伴走型採用支援サービス「あたりまえリクルーティング」を立ち上げ、これまで250社以上の採用支援に携わる。
2024年にはカーブアウトM&A(事業売却)を実施。現在は従業員1,000名規模の派遣会社にて経営企画部長・総務部長を兼任し、採用・組織づくり・人事制度設計を推進している。
採用支援会社としての現場経験と、事業会社の責任者としての実務経験の両面から、多くの成功と失敗を見てきた稀有なキャリアを持つ。
企業と個人がお互いを理解し、より良い出会いを実現する採用の在り方を追求している。
新卒の早期離職の原因は現場教育ではなく採用にある

「厳しく言うとすぐ辞めてしまう」「3ヶ月も持たないなんて何のための採用だったのか」。中小企業の経営者や人事責任者から必ず漏れる、早期離職へのため息です。100万円超の採用費と現場リソースを投じた矢先の退職は、金銭的損失だけでなく既存社員の士気にも直結します。
ただ、彼らは最初から辞めるつもりで御社の門を叩いたわけではありません。データと構造の両面から、原因が現場教育ではなく採用段階にあることを解き明かします。
新卒の6割は長く働きたいと願って入社している
結論から言えば、辞めていく若手の大半は入社時点では「長く働きたい」と考えています。ALL DIFFERENT株式会社の「新入社員意識調査2025」によると、「できれば今の会社で働き続けたい」と答えた新入社員は65.4%にのぼり、12年間の同調査で最大の割合となりました。多くの新人は腰を据えて働く意思を持って入社しているのです。(出典:ALL DIFFERENT株式会社「新入社員意識調査2025」)
ところが現実の離職率は、この意識と大きく乖離しています。厚生労働省の調査では、大卒新規就職者の3年以内離職率は34.9%(2021年卒)で、うち1年以内の離職が約12%を占めます。さらに踏み込むと、3ヶ月未満で退職した層のうち56.4%が「入社1週間未満」の段階で強烈なイメージギャップを感じていたというデータもあります。(出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」/株式会社スタッフサービス・ホールディングス「新卒3年未満で正社員を退職した若年層の意識調査」)
入社してわずか数日、まだ本格的な業務も始まっていない段階で「思っていた会社と違う」という拒絶反応が起きているわけです。これは現場の教育が上手いか下手かという次元の話ではありません。入社した瞬間に、すでに勝負は決着していると考えるべきでしょう。
現場教育を疑う前に採用設計のズレを疑うべき
若手が早期離職すると、多くの経営陣は「現場のサポートが足りなかった」「教育担当の教え方が厳しすぎた」と、オンボーディングのプロセスを疑いがちです。しかしこのアプローチは明確に間違っています。
入社3ヶ月以内の離職の真因は、現場教育ではなく採用設計の段階でボタンを掛け違えている点にあります。どれだけ現場社員が丁寧に迎え入れても、入社前に膨らんだ「理想の風船」が大きすぎれば、リアルに触れた瞬間に破裂してしまうためです。
現場の人間は、採用段階で勝手に引き上げられた「高すぎる期待値」の後始末をさせられているに過ぎません。教育担当に「もっと優しくケアしろ」と指導しても、根本原因には手が届かないでしょう。まず疑うべきは、面接や求人票で提示した期待値そのものです。
早期離職を招く採用マーケティングの「3つのギャップ」

では、入社1週間や3ヶ月で若手を絶望させる「ギャップの正体」とは何なのでしょうか。一言で表すなら「思っていた会社と実際の現場が180度違った」という期待値調整の失敗です。採用活動は本来、会社の魅力を正しく設計して伝えるマーケティング活動であるべきものです。
しかし多くの中小企業が、人が採れない焦りから無意識にマーケティングの禁じ手を使い、次の3つのギャップを生み出しています。
求人票を盛りすぎると入社1週間で落差に耐えられなくなる
最も分かりやすいギャップが、求人票の情報の「盛りすぎ」です。求人媒体の営業から「もっと見栄えを良くしましょう」「今の若者はキラキラしたワードに惹かれます」と促されるまま、自社の良い部分だけを10倍に膨らませてアピールしてしまうケースは少なくありません。
「アットホームで風通しの良い職場」「未経験からでも最先端のビジネススキルが身につく」——こうした華やかな言葉を並べ、仕事の地味な部分やしんどい業務、残業のリアルといった「不都合な真実」を隠して入社させる。この構造は、ECサイトで最高に綺麗な商品写真を見て購入したのに、届いたらペラペラの粗悪品だった状況と何ら変わりません。
期待値が最大まで膨らんだ状態で入社してくるからこそ、最初の1週間で目にする「地味な日常」との落差に耐えられなくなります。盛った求人票は、短期的に応募数を稼げても、中長期では早期離職という形で必ずコストになって返ってくるのです。
抽象的な魅力ワードが現場のリアルとズレを生む
2つ目のギャップは、言葉の具体性の欠如と現場実態のズレです。求人票や面接で「若手から幅広い業務に挑戦できて、圧倒的に成長できる環境」と伝えたとします。これを聞いた求職者は、入社直後からクリエイティブなプロジェクトに関わり、先輩たちがつきっきりでノウハウを教えてくれる姿を思い描くでしょう。
しかし現場で待っているのは、書類のコピー、データ入力、電話対応といった終わりの見えない雑務の連続です。中小企業の現場は常に人手不足でバタバタしているため、先輩たちも自分の案件で手一杯。「これ、マニュアル読んどいて」と放置されてしまう場面も珍しくありません。
会社側の意図は「まずは基礎的な雑用から覚えて、自分で考えて動いてほしい」というものだったとしても、事前の具体的な説明がないままだと若手の受け止め方はまるで違います。「幅広い業務とは雑用のことだったのか」「成長できるなんて嘘で、放置されているだけではないか」と裏切られた感覚だけが残るのです。抽象的な魅力ワードほど、現場との解釈のズレを生みやすいと心得ておくべきでしょう。
ベテランの前提と新人の想像には決定的な溝がある
3つ目のギャップは、業界イメージの決定的なズレです。10年20年とその業界で働いてきた経営者やベテラン社員にとっての「仕事のあたりまえ」は、業界外の未経験者や新卒にとって想像すらしていない「未知の苦痛」であるケースが多々あります。
例えばB to Bの動画編集業界を考えてみましょう。外から見れば「PCに向かってクリエイティブな映像を作るオシャレな仕事」に見えるかもしれません。しかし内実は、クライアントからの急な修正指示に追われ、何時間もテロップを打ち続け、音声のノイズを1コマずつ消していく緻密で地味な作業の連続です。
この「前提の共有」を面接の段階で徹底しなければ、「動画編集ってこんなに地味で孤独な作業なんですか」と1ヶ月も経たずに力尽きてしまいます。ベテランが無意識に省略している業務の実態こそ、面接で最も丁寧に言語化すべき情報だと言えます。
若手との価値観ギャップを埋める新しい面接設計

早期離職を防ぐには、若手世代が上の世代とは「OS(頭の中のオペレーションソフト)」から根本的に違うと割り切る発想の転換が必要です。WindowsのパソコンにMac専用アプリを無理やり入れれば、エラーで動きません。
昭和や平成に培った「仕事とはこういうもの」「これくらいの理不尽は耐えてあたりまえ」という古いOSを、今の若手の新しいOSにそのまま流し込もうとすれば、システムエラー(=早期離職)が起きるのも当然です。ここでは、その前提を踏まえた面接設計を2つの視点から掘り下げます。
根性論で若手を責める前に価値観の違いを前提化する
「最近の若い子は指示されたことしかやらない」「ちょっと注意しただけで翌日から来なくなる」——若手のモチベーションや根性のなさを責めるのは簡単です。しかし彼らのOSには、そもそも「理不尽な状況でも耐え抜く」というプログラムが入っていません。代わりに走っているのは、タイムパフォーマンスを重視するプログラムと、自分の仕事が誰の何の役に立っているのかという納得感を求めるプログラムです。
この価値観の違いは、今の時代に避けて通れないものです。根性論で若手を矯正しようとするのではなく、価値観の違いを前提として組み込んだ面接設計に切り替える必要があります。具体的には、面接の場で「あなたが今抱いている業界や仕事のイメージと、実際の私たちの現場は、こういう部分で大きく違うかもしれない」というリアルを、あらかじめ正しく伝えるアプローチが有効です。
若手のOSを書き換えることはできません。だからこそ会社側が「若手のOSで動く前提」に立ち、面接の設計そのものをアップデートしていくべきでしょう。
内定を出す前に期待値を適正水準まで引き下げる
では、具体的に誰がその期待値調整を担うのか。答えは、すべての採用権限を握る最終面接官(多くの場合は社長や役員)です。
多くの最終面接官は「優秀な人材だから、なんとしても引っ張りたい」という想いが強すぎて、面接の最後の瞬間まで会社の魅力や未来のビジョンを語り尽くしてしまいます。これが新人の期待値を天高く引き上げてしまう最大の原因です。最終面接官の本当の責任は、内定を出すことではなく、入社後の現実との『期待値調整』を行うことにあります。
面接の最終段階で、あえてこう切り出せるかどうかが会社の運命を分けます。
「君のスキルも熱意も素晴らしいし、ぜひ一緒に働きたい。でも、うちは求人票にあるようなキラキラした仕事ばかりじゃない。最初の3ヶ月は本当に地味なデータ入力や下準備ばかりで、ぶっちゃけかなりつまらないと感じるはず。先輩たちも忙しいから、手取り足取り教えてもらえると思ったら大間違い。それでも、うちの現場で一歩一歩やっていく覚悟はあるかい?」
現実の厳しさを突きつけ、入社前の期待値を適正な水準まで下げる。これを聞いて「じゃあ辞めます」と言う人材なら、入社してもどうせ1週間で辞めていきます。一方、不都合な真実を理解した上で「それでもやりたい」と入社する若手は、多少の理不尽や地味な仕事に直面しても「面接で聞いた通りだ」と納得し、乗り越えていけるのです。
まとめ:早期離職は「不都合な真実」を語る採用で防ごう
入社3ヶ月以内で若手が辞めていく現象は、現場教育の失敗でも、今の世代が弱いからでもありません。採用の入り口で自社を良く見せようと情報を盛り、耳障りの良い言葉で飾り、入社後の現実との整合性を無視した「採用設計の歪み」が引き起こした結果です。結局のところ、採用とは会社づくりそのものだと言えるでしょう。
会社の魅力を正しく伝えるとは、「良いことだけを言う」ことではありません。仕事の厳しさも、組織の未熟な部分も、すべてオープンに伝えた上で「それでもこの会社で挑戦したい」と言ってくれる相思相愛の仲間を見つけること。これこそが真の採用マーケティングの姿です。
求人媒体に大金を払って早期離職に悩まされるループは、もう終わりにしませんか。面接で勇気を持って「不都合な真実」を語ることから、3年5年と長く会社を支える本物のエース社員との関係性を築いていきましょう。
【経営者・人事責任者の方へ】
「不都合な真実」を語れる採用に切り替えたい。そう感じた方には、まず自社の採用プロセスを客観的に棚卸しすることをおすすめします。
私たちReviveは、御社の強みと弱みを言語化する「魅力設計」から、入社後のギャップを埋める「面接設計・定着設計」まで一気通貫で伴走する採用マーケティングの専門家集団です。「無料採用設計・組織相談会」では、期待値調整の失敗ポイントを一緒に洗い出し、明日から使える改善アクションまで持ち帰っていただけます。早期離職の連鎖を断ち切りたい方は、お気軽にご相談ください。

