「うちには採用担当を専任で置く余裕がない」「兼業のままでは、もう採用が回らない」。多くの中小企業の経営者や人事責任者が、こうした悩みを抱えているのではないでしょうか。求人票の作成、応募者対応、面接調整。総務や社長が本業の合間に手を動かし続ける現場のリアルは、私たちも支援先で日々目にしています。
しかし、実は日本企業の約7割超が兼業で採用を回しているのが実態であり、専任がいないこと自体は本質的な問題ではありません。真の課題は「誰が、いつ、何をやるのか」という役割設計が曖昧なまま放置されている点にあります。
本記事では、採用を一人で抱えず採用マーケティングの発想で会社全体の仕事へと転換する考え方から、業務を3つに分解する具体策、外部代理店の見極め方、そして明日から実践できる中小企業の採用の仕組み化4ステップまでを、支援現場の本音を交えて徹底解説します。読み終える頃には、専任ゼロでも回る採用体制の設計図が手元に残るはずです。
目次
監修者

株式会社Revive代表
熊野拓人
21歳で起業後、営業支援・採用支援事業を展開。
伴走型採用支援サービス「あたりまえリクルーティング」を立ち上げ、これまで250社以上の採用支援に携わる。
2024年にはカーブアウトM&A(事業売却)を実施。現在は従業員1,000名規模の派遣会社にて経営企画部長・総務部長を兼任し、採用・組織づくり・人事制度設計を推進している。
採用支援会社としての現場経験と、事業会社の責任者としての実務経験の両面から、多くの成功と失敗を見てきた稀有なキャリアを持つ。
企業と個人がお互いを理解し、より良い出会いを実現する採用の在り方を追求している。

株式会社Revive代表
熊野拓人
21歳で起業後、営業支援・採用支援事業を展開。
伴走型採用支援サービス「あたりまえリクルーティング」を立ち上げ、これまで250社以上の採用支援に携わる。
2024年にはカーブアウトM&A(事業売却)を実施。現在は従業員1,000名規模の派遣会社にて経営企画部長・総務部長を兼任し、採用・組織づくり・人事制度設計を推進している。
採用支援会社としての現場経験と、事業会社の責任者としての実務経験の両面から、多くの成功と失敗を見てきた稀有なキャリアを持つ。
企業と個人がお互いを理解し、より良い出会いを実現する採用の在り方を追求している。
採用担当がいない中小企業は約7割|まず知るべきデータ

「うちには採用専任を置く余裕がない」と感じている経営者や人事担当者は多いはずです。しかし、それは決してあなたの会社だけの特別な事情ではありません。まずは客観的なデータをもとに、日本の中小企業における採用体制の実像を確認していきましょう。
約7割の中小企業が兼業で採用を回している
結論からお伝えすると、専任の採用担当がいないのは日本の中小企業にとってデフォルトの状態です。
2021年にIndeedが実施した調査によると、採用担当者の72.4%が採用・人事以外の業務を兼務しているという結果が出ています(参照:「採用担当者の業務実態」に関する調査を実施 | Indeed プレスルーム)。世の中の企業の約7割超は、他業務と掛け持ちしながら必死に採用活動をやっているのが実態なのです。
つまり「専任の担当者がいないから採用がうまくいかない」というのは、構造的な無理の理由にはなりません。うまく回っている中小企業も、決して人手が潤沢なわけではなく、限られたリソースの中でやり方を工夫しているだけと言えます。
なぜ中小企業は「専任なしでは無理」と考えてしまうのか
多くの経営者が「専任がいないと無理だ」と思い込む背景には、採用を「一つの巨大で専門的な仕事」として捉えてしまう発想があります。
求人媒体の選定、原稿作成、スカウト送信、応募者対応、面接、内定フォローまで、これらを全部一人で完璧にこなすプロがいなければいけない、と考えてしまうケースは少なくありません。しかし、そんなスーパーマンが中小企業に来てくれる可能性は極めて低いでしょう。
「全部を一括りで考えてしまう癖」こそが、採用をストップさせている真犯人です。 発想を変えて業務を細かく切り分ければ、限られたリソースでも十分に採用を回せるようになります。
関連記事:中小企業が採用できない理由|条件は悪くないのに応募が来ない原因と対策
中小企業の採用を「会社全体の仕事」に変える発想

採用は求人広告を出せば勝手に応募が集まる時代ではなくなりました。自社の魅力を設計し、情報を発信し、応募導線を作る一連の活動は、人事一人の業務ではなく会社全体の意志そのものです。ここでは「一人抱え込み」の限界と、それを打破する役割分解の考え方を見ていきます。
社長・バックオフィスの兼務が限界を迎えるポイント
採用が滞る最大の原因は、人事・総務・社長のいずれかが一人で全てを抱え込もうとする体制にあります。
「自分がやらなきゃ進まない」と一人でボールを持ちすぎると、顧客トラブルや決算業務など突発的な仕事が入った瞬間、採用のボールはポロッと床に落ちてしまいます。その結果、応募者への連絡が3日遅れ、その間に優秀な候補者は他社の内定を承諾してしまう。まさに機会損失の連鎖と言えるでしょう。
採用活動は一部の担当者による孤独な戦いにしてはいけません。社内全員で取り組む「経営最優先プロジェクト」という認識を全社で共有することが、体制構築のスタートラインです。
中小企業の採用を仕組み化する3つの役割
「全員で取り組もう」と言っても、現場に「お前らも手伝え」と丸投げしては反発を招くだけです。ここで重要になるのが、採用業務を適切に「分解」する視点になります。
私たちは、採用活動の役割を大きく次の3つに分けて考えています。
| 役割の分類 | 具体的な業務内容 | 誰が担当すべきか |
| ①情報発信 | 社内の雰囲気の発信、写真撮影、インタビュー対応 | 社員全員・現場のスタッフ |
| ②候補者対応 | 日程調整、書類の管理、テンプレメールの送受信 | 総務・アシスタント(マニュアル化可能) |
| ③意思決定 | 書類選考の合否、面接、最終的な採用判断 | 経営者・現場の責任者 |
「①情報発信」は、まさに現場社員全員で取り組める領域です。仕事の様子を写真に撮ってもらったり、社内イベントを共有したりするだけでも十分に価値が生まれます。「②候補者対応」も、ルールさえ決めればアルバイトや派遣スタッフでも回せるルーティンワークに落とし込めます。
社長や核心メンバーが本当に注力すべきなのは、③の意思決定と、面接で自社の熱量を候補者に伝えることだけです。すべてを一人で抱えるから動けなくなるのであって、パズルのように細かく分ければ、専任がいなくても組織として十分に採用は回せます。
中小企業が頼るべき「いい求人広告代理店」の見極め方

社内で役割を切り分けても、「そもそも求人原稿を書く時間すら惜しい」という局面はあるはずです。そんなときは、外部の力をうまく借りるのも大いなる正攻法と言えます。ここでは、中小企業にとって現実的な外部活用の選択肢と、失敗しない代理店選びのポイントを解説します。
予算がない中小企業が選ぶべき代理店の条件
RPO(採用アウトソーシング)を導入できれば楽ですが、月額数十万円のコストは中小企業にとって決して安くありません。「予算的にそこまでは出せない」という局面で、最も近道になる現実的なパートナーが「いい求人広告代理店」です。
ただし、ここで言う「いい代理店」とは、単に「枠を売って求人掲載の手続きをして終わり」という物売り業者ではありません。「御社が理想とする人物を1人獲得する」という共通のゴールに向けて、しっかりと並走し、意思疎通ができるパートナーを指します。
掲載代行と伴走支援を混同したまま契約すると、月額費用を払っているのに求人原稿がテンプレのまま放置される、という悲劇が起きてしまいます。 代理店を選ぶときは、この「共通ゴールに並走する姿勢」があるかどうかを最初の判断軸に据えてください。
契約前に確認すべき運用体制のチェック項目
代理店選びで現場がよく目にする失敗パターンがあります。「契約前の営業マンの話はすごく魅力的だったのに、いざ掲載が始まったら全然連絡が来ないし、原稿もテンプレ通りでガッカリした」というケースです。
特に大手代理店では、契約を取る「営業」と、実際に原稿を書いたり運用したりする「実務担当(プランナー)」が完全に分かれていることが多々あります。ここに構造的なズレが生じるわけです。
このズレを防ぐために、契約前は必ず次の2点を先方の体制に突っ込んで確認しておきましょう。
- 実際の運用は誰が、どんな体制でやってくれるのか
- 隔週での振り返りミーティングには、原稿を作る担当者も同席してくれるのか
むやみに契約せず、一緒に汗をかいてくれる代理店とタッグを組めれば、彼らは実質的に「社外の採用チーム」として機能してくれます。 契約前のこの一手間が、その後の採用成果を大きく左右します。
関連記事:採用支援パートナーの選び方|中小企業が陥る3つのズレと見極めの質問
中小企業のための「回る採用体制」4ステップ

ここまでの考え方を踏まえたうえで、具体的に自社の中でどう体制を構築すればよいのか。明日から実践できる、最もシンプルで効果的な4つのステップを順に解説します。
ステップ①:起点となる「採用カレンダー」を作る
体制構築で最初にやるべきは、何はともあれ「採用カレンダー」を作ることです。ここがブレている企業があまりにも多く見受けられます。
「いつまでに、どのような人を、何人採用したいのか」を年間、あるいは半期の計画としてビジュアル化してください。「なんとなく良い人がいたら採りたい」ではなく、「10月の繁忙期に向けて、8月末までに営業を1人入社させる。逆算すると6月中には求人をスタートしなければいけない」というタイムラインを明確にするイメージです。
採用カレンダーは、社内全員が同じゴールに向かって動くための「共通言語」であり、すべての採用活動の起点となります。 ここが曖昧なままだと、後続のタスク設計もすべて崩れてしまうため、最初に必ず整えましょう。
関連記事:新卒採用の早期化に負けない|中小企業の採用スケジュールと前倒し採用マーケティング
ステップ②:「いつ・誰が・何を」までタスクに落とし込む
カレンダーができたら、その計画に対して「いつ」「誰が」「何を」やるのかを、具体的なタスクにまで落とし込みます。
- 毎週月曜の朝10時に、Aさんが応募ボックスをチェックする
- 応募があったら24時間以内に、Bさんがテンプレで面接候補日を送る
- 水曜の15時に、社長が面接枠をあらかじめ2コマ空けておく
このレベルまでカレンダーに組み込んで初めて、兼務のスタッフも「自分のルーティンワーク」として動けるようになります。採用業務は「やる気」ではなく「仕組み」で回すもの。担当者の頭の中にあるタスクを外部化し、誰が見ても分かる形にすることが仕組み化の本質です。
ステップ③:採用プロセスをチーム全員に可視化する
一人がボールを持ちすぎると、その人が体調を崩したり本業でトラブルがあったりした瞬間、すべての採用活動がピタッと止まってしまいます。
「今、応募者はどこで止まっているのか」「書類選考の結果待ちなのか、面接の日程調整中なのか、それともエージェントからの推薦状の確認待ちなのか」。こうしたステータスを、スプレッドシートでも何でもいいので、関わるメンバー全員が見える状態にしてください。
どこで作業が目詰まりしているかが一目で分かれば、周りが「そこ、代わりにメール打っておくよ」と自然にフォローし合える文化が生まれます。 可視化は、属人化を防ぎながらチームで採用を回すための最強の武器と言えます。
ステップ④:小さな仕組みを検証しながら育てる
最初から完璧な仕組みを作る必要はありません。まずは「応募が来たら、24時間以内に必ず1次面接の日程を決める」という、小さくても確実に機能する「回る仕組み」を1つ作ってみてください。
やっていくうちに、「現場の面接官のスケジュール調整がネックだな」「求人票の文言が、現場のリアルな声とズレてるな」といった課題が必ず見えてきます。採用の仕組み化はマーケティングのPDCAと同じで、小さく回して検証し、少しずつチューニングしながら育てていくものです。 一発で正解を作ろうとせず、走りながら磨き込む姿勢が結果的に一番の近道になります。
まとめ:問題は「担当者がいないこと」ではなく「役割が決まっていないこと」
繰り返しになりますが、中小企業において「採用担当がいないこと」自体は、まったく問題ではありません。真の課題は「誰が、いつ、何をやるのか」という役割が、明確に決まっていない点にあります。
採用とは、求人媒体にお金を払えば解決する魔法ではなく、自社の魅力を設計し、関わる人の役割を紡いでいく地道な「会社づくり」そのものです。
カレンダーを描き、業務を分解し、進捗を可視化して、小さな仕組みから磨き込んでいく。専任がいなくても、この4ステップを回せば採用体制は確実に強くなります。今日ご紹介した設計図から、まずは一つ、明日から自社で始められる仕組みを動かしてみましょう。
経営者・人事責任者様向け
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