求人広告を出してようやく採用した店長が、半年も経たずに辞めてしまう。店舗を任せきりにしていた店長から、ある日突然「もう限界です」と告げられる。
飲食業界の経営者と話していると、こうした声が必ずと言っていいほど聞こえてきます。採用難が続くなか、入った人材が次々に流出する負のループに悩む企業は少なくありません。
ただ、原因は本人の根性不足でも給与の低さでもないのです。業務と責任が店長一人に集中する、組織の構造にこそ問題があります。
本記事では、店長の離職が止まらない理由から、社長の右腕となるNo.2の育て方、採用チャネルの選び方、入社後のオンボーディングまでを整理します。10年先も生き残る店舗づくりの道筋が見えてくるはずです。
目次
監修者

株式会社Revive代表
熊野拓人
21歳で起業後、営業支援・採用支援事業を展開。
伴走型採用支援サービス「あたりまえリクルーティング」を立ち上げ、これまで250社以上の採用支援に携わる。
2024年にはカーブアウトM&A(事業売却)を実施。現在は従業員1,000名規模の派遣会社にて経営企画部長・総務部長を兼任し、採用・組織づくり・人事制度設計を推進している。
採用支援会社としての現場経験と、事業会社の責任者としての実務経験の両面から、多くの成功と失敗を見てきた稀有なキャリアを持つ。
企業と個人がお互いを理解し、より良い出会いを実現する採用の在り方を追求している。

株式会社Revive代表
熊野拓人
21歳で起業後、営業支援・採用支援事業を展開。
伴走型採用支援サービス「あたりまえリクルーティング」を立ち上げ、これまで250社以上の採用支援に携わる。
2024年にはカーブアウトM&A(事業売却)を実施。現在は従業員1,000名規模の派遣会社にて経営企画部長・総務部長を兼任し、採用・組織づくり・人事制度設計を推進している。
採用支援会社としての現場経験と、事業会社の責任者としての実務経験の両面から、多くの成功と失敗を見てきた稀有なキャリアを持つ。
企業と個人がお互いを理解し、より良い出会いを実現する採用の在り方を追求している。
飲食業界で店長の離職が止まらない本当の原因

求人広告を出してようやく採用した店長が、半年も経たずに辞めてしまう。飲食業界の経営者からは、こうした声が絶えません。原因は本人の根性不足や給与条件ではなく、長年放置されてきた組織の構造にあります。離職が止まらない2つの理由を見ていきましょう。
業務集中と家庭への影響が重なって限界を迎えるから
店長が限界を迎える背景には、業務の集中と家庭への影響が同時に進む構造があります。飲食店の店長は、驚くほど多くの役割を一人で背負っています。シフト管理、売上とコストの管理、アルバイト教育、接客や調理、クレーム対応。これらすべてが一人の肩にのしかかるケースも珍しくありません。
業務が特定の個人に集中すれば、当然ながら心身は削られていきます。労働時間は延び、休日もまともに取れず、プライベートの時間が消えていく。すると、問題は本人だけにとどまらなくなります。
「いつまでこの働き方を続けるの」「子どもの顔を見る時間もないじゃない」。家族からこう言われ、不安にさせている罪悪感に耐えかねて退職を選ぶ店長は、実際に少なくありません。店長を孤独な戦士にしたままでは、どれだけ求人に投資しても抜けた穴を埋める作業が続くだけです。
関連記事:管理職の罰ゲーム化とは?中小企業の採用課題を根本から解く3つの対策
店長を支える「No.2」が不在のまま採用を続けているから
もう一つの理由は、店長を支える存在を置かないまま採用を繰り返している点にあります。人が抜けるたびに新しい店長を採用しても、業務と責任が一人に集中する構造は何も変わりません。
ここで必要になるのが、店長の隣で店舗運営を一緒に担い、社長の右腕にもなる「No.2」です。スタッフのモチベーション管理や日々の売上フォローを分担できる相棒がいれば、店長の負担は大きく軽くなります。
No.2の役割は、店長を現場の混乱から守り、健全に店舗を回せる体制を裏から支えることです。一人で抱え込まず、すぐに相談してタスクを分散できる環境をつくる。店長を孤独にしない体制づくりこそが、飲食業界の組織づくりの出発点であり、離職を止める最も確実な一手になります。
「No.2」が定着しない会社に共通する組織設計の落とし穴

No.2が大事なのは分かっていても、そんな人材はうちにはいない。多くの経営者がそう口にします。たしかに、社長の想いを理解して現場を回せる完璧な右腕は、市場を探しても簡単には見つかりません。ただ、育たない本当の原因は人材不足ではなく、経営側の組織設計にあります。
外部から即戦力を採用しようとする誤解
外部から即戦力のNo.2を引っ張ってくる手法は、中小企業では想像以上にリスクが高くなります。他社でバリバリ実績を出してきたマネージャーを、高い給与を提示して迎える。一見すると近道に見えますが、うまくいかないケースが目立ちます。
優秀な人材であるほど、自社が長年培ってきた文化や現場のスタッフとの間に摩擦を生みやすいからです。「前の会社ではこうでした」「今のやり方は非効率です」。正論であっても、生え抜きのスタッフからは自分たちのやり方を否定されたと受け取られます。
結果として現場のエンゲージメントが下がるか、孤立した本人が早々に去っていくことになります。必要なのは完璧な人材を探すことではなく、支える力を持つ人を社内で見つけ、時間をかけて自社の色に育てる視点です。リーダーシップとフォロワーシップのバランスが取れた人材であれば、未経験からでも十分に育てられます。
店舗数に合わない組織図のまま拡大する危うさ
No.2の配置は、企業の規模に合わせて変えていく必要があります。ここを曖昧にしたまま店舗数だけを増やせば、どこかで必ず組織は崩れてしまうでしょう。
3店舗までのフェーズであれば、企業全体を支えるNo.2が1名いれば現場は回ります。社長の目もぎりぎり全店舗に届くため、No.2が細かなフォローに入ることで店長の負担は十分にカバーできるはずです。
ところが6店舗を超えると、景色は一変します。社長一人では全体の状況を把握しきれませんし、No.2が1名で6店舗をケアするのも物理的に不可能です。この段階からは、No.2の下に各エリアを統括するエリアマネージャーを置く組織図の設計が欠かせません。
自社が今どの規模にいて、次の成長のためにどんな組織図を描くべきか。店舗展開のスピードに合わせて人を育てる仕組みを埋め込まなければ、社長も店長もいずれパンクしてしまいます。
採用手法に振り回されない、飲食店のチャネル戦略と選考の仕組み化

組織の土台となる考え方が見えてきたら、次は人をどう集めるかという実務です。求人サイト、ダイレクトリクルーティング、人材紹介、SNS採用と、手法は数えきれないほどあります。限られた予算で成果を出す鍵は、チャネルの優先順位づけと選考の速さにあります。
定着率が最も高いリファラルとアルムナイの活用
最もコストパフォーマンスが高く、ミスマッチも起きにくいチャネルは、リファラル(社員紹介)とアルムナイ(出戻り)です。ここを軽視して求人広告ばかりに課金している企業は、非常にもったいないと言わざるを得ません。
リファラルは、実際に自社で働いている社員が知人を誘う手法です。会社の良い面も大変な面も理解したうえで入社するため、定着率は抜群に高くなります。紹介した社員にインセンティブを出す制度を設けるほうが、広告費を外部に払うよりはるかに健全で有効でしょう。
近年とくに重要性が増しているのが、過去に退職したメンバーを再び迎え入れるアルムナイです。一度辞めたら裏切り者、という古い価値観はもう手放してよい時代になりました。他社を経験したからこそ、人間関係の温かさや働きやすさを実感している元従業員は驚くほど多くいます。カルチャーマッチが済んだ即戦力ですから、退職者と定期的に連絡を取り合う関係づくりも立派な採用活動です。
関連記事:リファラル採用のデメリットとは?社内がギスギスする原因と正しい制度設計
関連記事:アルムナイ採用とは?元社員を再雇用するメリットと中小企業の導入ステップ
集客と採用を同時に動かすSNSと採用サイトの運用
自社SNSや採用サイトは、求職者に安心感を与えるためだけのツールではありません。飲食店の場合、集客と採用を同時に動かせるという大きな利点があります。
店を探している一般のお客様と、働く場所を探している求職者。この二つの目線は、実のところ地続きです。たとえばSNSで看板メニューの仕込みへのこだわりを発信すれば、見た人は食べに行きたいと感じます。それと同時に、こんな仕事をしている職場で働いてみたいという気持ちも芽生えるはずです。
観光需要や目玉商品を持つ店舗なら、その強みを前面に出した発信で売上拡大と応募獲得を同時に狙えます。採用サイトも求人要項を並べたページで終わらせず、働く人の熱量と店舗の魅力を伝えるコンテンツとして設計しましょう。
候補者を他社に逃さない選考スピードの設計
魅力的なチャネルから応募が集まっても、選考プロセスがもたつけば候補者は他社に流れてしまいます。意外と知られていませんが、応募ボタンを押してから入社を決めるまでに、企業とのやり取りは最低6回発生するものです。
応募受付の連絡、面接日程の調整、リマインド、結果通知、内定承諾のフォロー、入社手続きの案内。現場業務に追われながらこれらを手動で回していると、連絡漏れや返信の遅れが起こります。今の求職者は、連絡が2日遅れただけで対応がずさんだと判断し、他社へ移ってしまうのです。
だからこそ、ATS(採用管理ツール)や自動日程調整ツールの導入、一次面接のオンライン化といった仕組み化が欠かせません。テクノロジーで削減できる工数は徹底的に削り、浮いた時間を目の前の候補者と向き合うために使う。スピードと丁寧さを両立させる体制こそが、採用を成功させる実務の土台になります。
関連記事:採用担当がいない中小企業でも回る|採用の仕組み化4ステップ
入社直後の離職を止めるオンボーディングの仕組みづくり

苦労して素晴らしい人材を採用し、最速の選考プロセスを経て入社してもらった。本当の勝負はここからです。採用とは定着と活躍まで含めた活動であり、数ヶ月で辞められてしまえばそれまでの努力は水の泡になります。入社直後の離職を防ぐ3つの仕組みを見ていきましょう。
入社前後のギャップを生まない情報開示
人が辞めていく最大の原因は、入社前に抱いた期待と入社後に直面した現実のギャップです。多くの企業は、求人票や面接の段階で少しでも自社を良く見せようと見栄を張ってしまいます。
残業時間を少なめに伝えたり、実際は泥臭い作業が多いのにやりがいの部分だけを強調したり。そうした脚色は、入社した瞬間に文字どおり1日でバレます。騙されたと感じられた時点で、信頼関係は一気に崩れてしまうでしょう。
「週末は目が回るほど忙しいですが、乗り越えたときのチームの一体感はどこにも負けません」「今は高い給与を出せませんが、この評価基準をクリアすれば1年でこれだけ昇給できます」。大変な現実もセットで伝えたうえで、理念やビジョンに本当に共感してくれる人を迎える。この正直な採用こそが、結果として離職率を最も下げる近道になります。
評価せず本音を聴くことに徹する1on1面談
入社したばかりの社員は、周囲が想像する以上に強い不安を抱えています。周りと上手くやっていけるだろうか、自分の進め方は間違っていないだろうか。この小さな不安を放置すると、やがて大きな不信感に育ち、突然の退職宣告につながります。
これを防ぐために効果的なのが、定期的な1on1面談の時間です。ただし、多くの現場で行われている1on1は、やり方を根本から間違えています。上司が「最近どうだ、もっとここを頑張れよ」と一方的に評価や説教をする面談は、新入社員をさらに追い詰めるだけでしょう。
本当の1on1とは、評価の場ではなく相手の声を聴くヒアリングに徹する時間です。今いちばん不安に感じていることは何か、職場で少し話しにくいと感じる人はいないか。心に溜め込んだ本音を吐き出せる安全な場所をつくってあげる。ただ話を聴いて受け止めてもらえたと感じるだけで、新入社員のエンゲージメントは大きく高まります。
何をすれば昇給するかを示す評価制度の言語化
新入社員が定着し、将来の店長やNo.2へ成長していくためには、キャリアパスの可視化が欠かせません。
中小企業の飲食店でよくある悪い例が、頑張って売上を上げてくれたらそのぶん給料も上げる、という感覚的な約束です。これでは、何をどこまでやればいいのか、本当に見てもらえているのかが分からず、働く側は将来に不安を抱えます。今の若い世代は、曖昧な精神論よりも明確なルールを好みます。
「このチェックリストの項目をマスターしてシフト管理ができるようになれば、基本給が〇万円上がります」「店舗の利益率を〇%で維持できたら、これだけのインセンティブを出します」。何をすればいくら給料が上がるのかを評価制度として言語化すれば、社員は安心して目の前の仕事に打ち込めます。進むべき道がロードマップのように見えているからこそ、この会社でキャリアを積もうという意欲につながるのです。
まとめ|採用は「店長を一人にしない仕組みづくり」から始まる
飲食業界における採用と定着、そして組織づくりについて、現場の視点から掘り下げてきました。求人広告の出し方といった目先のテクニックだけで人を集める時代は、すでに終わっています。
本当に取り組むべきは、店長を孤独な戦士にせず、その隣に頼れるNo.2を配置できる組織の構造をつくること。そして、入社した人が迷わず成長できる教育と評価の仕組みを、一つひとつ整えていくことです。
10年先も地域のお客様に愛されながら店舗を展開していくために、まずは自社の強みと弱みを客観的に把握し、目の前の店長やスタッフの声に耳を傾けることから始めましょう。
【「店長が定着しない」「右腕となる人材が育たない」とお悩みの飲食店経営者さまへ】
株式会社Reviveでは、御社の店舗運営や採用活動のどこにボトルネックがあるのかを明らかにする「当たり前リクルーティング組織診断(無料個別相談)」を実施しています。
- 店長に業務が集中しすぎていて、いつ辞めてしまうか不安
- 求人を出してもミスマッチが多く、採用コストだけが膨らんでいる
- 社内からNo.2を育てたいが、具体的な評価制度や教育プランが分からない
私たちは、単なる求人媒体の売り手でも、きれいごとを並べるコンサルタントでもありません。御社の現場に寄り添い、10年先も潰れない強い組織づくりを並走して形にするパートナーです。まずは、現在の店舗のリアルなお悩みをお聞かせください。

