「また1年持たずに辞められた」。そんなため息が、毎年のように繰り返されていませんか。採用コストは積み上がり、現場は疲弊し、残ったメンバーの負担だけが増えていく。この悪循環の原因を「最近の若手は根性がない」で片づけている限り、来年も同じことが起こります。
厚生労働省の最新データでは、大卒の3年以内離職率は全体で31.2%。しかし従業員5〜29人の事業所では50.6%にのぼります(出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和5年3月卒業者)」)。中小企業ほど、辞められやすい構造を抱えているのが実情です。
本記事では、早期離職の原因を「1年未満」と「3年以内」に分けて整理し、退職代行への対策も含めて、会社側が今すぐ見直すべき受け入れ体制と評価の仕組みを解説します。
目次
監修者

株式会社Revive代表
熊野拓人
21歳で起業後、営業支援・採用支援事業を展開。
伴走型採用支援サービス「あたりまえリクルーティング」を立ち上げ、これまで250社以上の採用支援に携わる。
2024年にはカーブアウトM&A(事業売却)を実施。現在は従業員1,000名規模の派遣会社にて経営企画部長・総務部長を兼任し、採用・組織づくり・人事制度設計を推進している。
採用支援会社としての現場経験と、事業会社の責任者としての実務経験の両面から、多くの成功と失敗を見てきた稀有なキャリアを持つ。
企業と個人がお互いを理解し、より良い出会いを実現する採用の在り方を追求している。

株式会社Revive代表
熊野拓人
21歳で起業後、営業支援・採用支援事業を展開。
伴走型採用支援サービス「あたりまえリクルーティング」を立ち上げ、これまで250社以上の採用支援に携わる。
2024年にはカーブアウトM&A(事業売却)を実施。現在は従業員1,000名規模の派遣会社にて経営企画部長・総務部長を兼任し、採用・組織づくり・人事制度設計を推進している。
採用支援会社としての現場経験と、事業会社の責任者としての実務経験の両面から、多くの成功と失敗を見てきた稀有なキャリアを持つ。
企業と個人がお互いを理解し、より良い出会いを実現する採用の在り方を追求している。
早期離職の原因は本人の根性ではなく会社側にある

「せっかく採用したのに、半年も経たずに辞められてしまった」。こうした相談は後を絶ちません。ただ、原因は本人のやる気ではなく会社側の設計にあります。ここでは、離職が止まらない会社に共通する2つの構造を見ていきます。
小手先のテクニックで離職率は下がらない
離職のループを止める特別な施策は存在しません。定着率が上がらないとき、多くの企業は「もっと精度の高い適性検査はないか」「メンタルケアツールを入れれば止まるのではないか」とテクニック論に向かいます。しかし、それさえやれば解決するという魔法の杖は、どこを探しても見つかりません。
本当に必要なのは、驚くほど地味な作業の積み重ねです。入社前の情報開示に嘘はないか。入社初日に歓迎の空気をつくれているか。現場で孤立させず、こまめに声をかけられているか。どれも新しい手法ではなく、昔から当たり前と言われてきたことばかりです。
この当たり前から逃げ、「最近の若手は」と他責にしている限り、状況は変わりません。採用手法をいくら変えても、受け皿が整っていない組織からは人が抜け続けます。 離職のループは、一発逆転の施策を探すのをやめた企業から止まっていきます。
関連記事:中小企業の採用成功は「考え方」から|手法より先に見直す定義・数字・リソース設計
採用後の放置が新人の不信感を生む
新入社員の不信感は、入社初日の数時間で生まれます。中小企業の現場では、採用できたこと自体に満足してしまい、受け入れの準備が後回しになるケースが少なくありません。
「今日から入った○○さんだから、適当に後ろで見ていて」と言われ、マニュアルもないまま時間だけが過ぎていく。先輩たちは自分の業務で手一杯で、声をかける余裕もない。緊張して出社した当人にとって、この数時間はかなり長く感じられます。
こうして放置された新人は、その日のうちに「歓迎されていないのかもしれない」と感じ取ります。入社初日の居心地が、数週間後に辞めるか残るかを分けています。 採用とは、求人を出して人を集める作業ではありません。魅力設計から応募導線、面接、そして入社後の受け入れまでがつながって、はじめて一人の戦力が育ちます。
関連記事:早期離職が3ヶ月で起こる理由|中小企業が見直すべき採用マーケティング
中小企業は「3年以内に5割が辞める」前提から逆算する

早期離職を考えるうえで、避けて通れない数字があります。厚生労働省が2026年10月に公表した最新データによると、大卒の3年以内離職率は全体で31.2%。しかし従業員5〜29人の事業所では50.6%に達します(出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和5年3月卒業者)」)。この前提から、若手の価値観と向き合い方を整理します。
20代で複数社を経験するのが合理的な選択になっている
今の20代にとって、転職はドロップアウトではありません。むしろ、20代のうちに毛色の違う2〜3社を経験し、現場で実務スキルを積んだうえで、30歳手前に自分の軸を固める。このステップが、極めて合理的な生き方として受け止められています。
転職エージェントの現場を見ると、その変化がよく分かります。相談に来る若手の多くは、現職への不満だけで動いているわけではありません。「この環境にあと3年いて、自分の市場価値は上がるのか」という問いから逆算して次を探しています。
彼らが何より恐れているのは、退職そのものではなく、成長実感が得られないまま時間が過ぎることです。 そこへ「うちに骨を埋めてほしい」というスタンスで向き合っても、心の距離が開くだけに終わります。まずは、若手が生きている時間軸を受け入れる覚悟が必要です。
在籍3年を前提に逆算して組織を設計する
これからの中小企業は、「3年勤めてくれればまずは十分」と割り切るほうが健全です。「どうせ3年で辞めるなら育てるだけ無駄だ」とへそを曲げると、育成の手を抜いた分だけ離職が早まる悪循環に入ります。
焦点を当てるべきは、在籍している3年間でどれだけ濃いギブ・アンド・テイクができるかです。会社側は、短期間で大きく成長し、現場で成果を出せる教育体制と環境を用意します。若手側は「ここにいればどこでも通用するスキルが身につく」という手応えがあるからこそ、その3年にフルパワーでコミットしてくれます。
そして、もし新しい挑戦のために旅立つのであれば、笑顔で送り出せる関係をつくっておく。最初から時間軸を逆算して設計した組織ほど、「居心地がいいからもう少し続けよう」と離職率が下がる逆説が起こります。
「いつ辞めたか」で変わる早期離職の原因と打ち手

一言で早期離職と言っても、原因は辞めたタイミングによって大きく異なります。すべての退職に同じ対策を打っても、効果は出ません。ここでは1年未満と3年以内の2つに分け、それぞれのボトルネックを解きほぐします。
1年未満の離職はミスマッチと受け入れ不足から起きる
入社から数ヶ月で辞めるケースは、採用時のマッチングか、受け入れ体制のどちらかに原因があります。本人の適性を疑う前に、まず自社の2つの工程を点検してください。
ひとつは、求人票や面接で自社を良く見せすぎていなかったかという点です。残業時間や給与条件、仕事の泥臭さを伏せたまま、きれいな部分だけを伝えて採用すると、入社直後に強いギャップが生まれます。「聞いていた話と違う」と感じた時点で、新人は心のシャッターを下ろします。
もうひとつが、前述した現場での放置です。ギャップと放置が重なったとき、1年未満の退職はほぼ確定します。 この層の離職が多い会社は、研修を増やす前に、面接で自社の弱みも誠実に伝えているか、入社から3ヶ月目までのサポートが仕組みになっているかを見直すべきです。
3年以内の離職は評価基準の不透明さから起きる
1年を乗り越えた社員が2〜3年目で辞める場合、原因はマッチングではなく評価制度にあります。入社から1年も経てば、現場の仕事はひととおり一人で回せるようになります。だからこそ、次のステップに目が向きます。
このとき若手の中に浮かぶのは、「この仕事を続けた先に自分の未来はあるのか」「これだけやっているのに、なぜ給料が変わらないのか」という問いです。ところが多くの会社では、何をどこまで達成すれば役職が上がり、給与がいくらになるのかが言語化されていません。
「頑張っていればいつか見てもらえる」という精神論は、ゴールの見えないマラソンを走らせているのと同じです。 結婚や出産といったライフイベントを控えた20代後半にとって、この不透明さは決定的です。将来を預けられないと判断すれば、キャリアアップのための転職を選ぶのは自然な流れになります。
関連記事:中堅社員の退職理由と対策|中小企業がやるべき離職防止と定着設計3選るのです。
退職代行を使われる企業がとるべき対策は入社初日にある

2万円程度を払えば、本人が会社と一切連絡を取らずに翌日から出社せずに辞められる。この現実に怒りを感じる経営者は少なくありません。ただ、向き合うべきは代行サービスそのものではなく、その手段を選ばせた自社の状態です。
代行を選ぶ背景には引き止めへの恐怖心がある
若手がわざわざ2万円を払う理由は、会社を困らせたいからではありません。その根底にあるのは、圧倒的な恐怖心です。
「辞めたいと言ったら、ものすごい剣幕で怒られるのではないか」「人手不足を理由に強引に引き止められ、ずるずる続けさせられるのではないか」。こうした想像が働くのには、たいてい心当たりがあります。先輩が辞めるときに上司が陰で「根性がない」と話していた。普段から高圧的で、本音を言える空気がない。そうした記憶が、正面から伝えるという選択肢を奪います。
退職代行を使われるという事態は、社員が退職の相談すらできない組織だと市場から突きつけられている状態です。 まずはその警告として受け止めるところから、対策が始まります。
入社初日に退職時のルールを言語化して共有する
退職代行の最大の実務的ダメージは、引き継ぎがないまま現場に穴が空くことです。担当顧客の情報も日々のタスクもブラックボックスのまま人が消えるため、残されたメンバーが混乱します。
これを防ぐ打ち手は、退職を切り出された後の引き止め交渉ではありません。入社初日の段階で、出口のルールを言葉にして共有しておくことです。「ステップアップのための退職はいつでも応援する。辞めること自体は自由だし、引き止めもしない。ただし、一緒に働く仲間とお客様に迷惑をかけないよう、引き継ぎだけは必ず行ってほしい」。この約束を、最初に交わしておきます。
出口が明確な会社では、社員は余計な恐怖心を抱かずに済みます。 その結果、いざ辞めるときも代行に頼らず、「次のキャリアに進みたくて」と自分の口で相談してくれる確率が格段に高まります。
早期離職の原因と向き合うことが会社づくりそのものになる
採用とは、会社づくりそのものです。人がすぐに辞めていく課題の根底にあるのは、採用テクニックの有無ではなく、自社が安心して働き、未来を託せる組織になっているかという一点に尽きます。
新入社員が踏ん張れないのは、根性がないからではありません。頑張る理由、つまり明確な目標と納得できる報酬の仕組みを、会社側が示せていないからです。そして、転んだときに隣で声をかけ、立ち上がれるよう支える伴走の仕組みがあるかどうかが問われます。
耳の痛い話ですが、早期離職の原因は基本的に会社側にあります。教育体制と評価の仕組み、そして現場の空気感をアップデートし、まずは目の前の一人の居心地に向き合うところから始めましょう。
【「人は採れるのに、すぐ辞めてしまう」「自社の定着設計のどこが崩れているか分からない」とお悩みの経営者・人事責任者の方へ】
株式会社Reviveでは、採用活動から入社後の受け入れ、評価制度までをマーケティングの視点で客観的に診断する「当たり前リクルーティング・定着組織力診断(無料個別相談)」を実施しています。
- 1年未満の早期離職が続き、採用コストが回収できていない
- 新人教育を現場の店長やマネージャーに丸投げしてしまっている
- 退職代行を使われない、風通しの良い評価と伴走の仕組みをつくりたい
年間400人規模の採用・育成に携わってきた現場の知見から、貴社がいま見直すべき組織のボトルネックを本音で洗い出します。まずは、採用と定着に関するモヤモヤをお聞かせください。

